5 October 2020
2020年9月16日、楽天モバイルとテレフォニカはOpenRAN、5Gコア、Operation Support System (OSS)関連の技術推進に係る覚書 (MoU)を締結したと発表しました。
欧州ではOpenRANはまだほとんど導入されていません。今回の覚書は、日本市場でOpenRAN展開の実績を持つ楽天モバイルの知見を取り入れ欧州での5Gネットワーク導入加速を狙うテレフォニカの意向が強く反映されたものだと私たちは考えています。
従来の方式でモバイルネットワークを構築する場合、移動体通信事業者(MNO:Mobile Network Operator)は無線マネジメント用ソフトやハードウェアを携帯基地局ごとに設置しなければなりませんでした。OpenRAN方式では、それらの設置なしでも基地局から離れたデータセンターの無線マネジメントソフトからリモートコントロールができます。OpenRANは、5Gネットワーク構築スピードを低コスト・短期間で加速できる画期的な仕組みなのです。
今後両社は、技術研究開発や実証実験のみならず、OpenRANのハードウェア、ソフトウェアの共同調達スキームの開発、コスト効率の高い5Gエコシステムの構築、国際ローミングによる5G展開の加速など幅広い分野で協業を進めると発表しています。
楽天モバイルはRakuten Communications Platform (RCP)を構築し日本でのクラウドベースのモバイルネットワークを最初に提供開始した企業でもあります。彼らのプラットフォームを応用することで5G分野でも導入・運用のコスト削減や導入期間の短縮が実現でき企業が5G事業に参入しやすくなるため、両社はここでも連携していく予定です。
テレフォニカはスペイン国営企業Compañía Telefónica Nacional de España (CTNE)として1924年に設立され(後に民営化)、現在は欧州、南米を中心に固定電話、携帯電話サービスを3億4000万人超の顧客に提供する世界有数の企業です。Movistar, O2, Vivoといった有名ブランドもテレフォニカの傘下です。
テレフォニカはかねてからオープンな無線ネットワークの構築を支持する立場で、Telecom Infra Project (TIP)、O-RANアライアンス、 業界団体Open RAN Policy Coalition等のメンバーとして積極的に活動しています。また同社は、携帯通信網は、複数ベンダーのソフトやサーバーでの運用が可能な、バーチャルかつクラウドベースのインフラに進化すべきだとしています。
テレフォニカは今後OpenRANをまずはブラジル、ドイツ、スペイン、イギリスへ展開し、2022年から2025年にかけて新規に導入する4G/5G RANのうち、約半数をOpenRANにする計画を発表しました。
楽天モバイルの親会社・楽天は、1990年代後半、まだイーコマースが珍しかった頃から「楽天市場」を開始し、その後フィンテック、スポーツ、メディア、エネルギーと様々な分野に事業を展開してきました。楽天モバイルの設立は2018年と比較的最近ですが、積極的に新技術開発やビジネスモデル採用を行い、さらに実用化、商業化も進める先進性や実行力がテレフォニカにとって大きな魅力だったのではないでしょうか。
これまで、特に通信分野では「ガラパゴス化している」と言われてきた日本企業ですが、こうして国際連携、国際展開へと繋がる連携が生まれたことは大変喜ばしいニュースです。
先月「英国5G分野で日本に協力要請」にてご報告しましたように、5G分野における日本企業の国際展開のチャンスが到来していると感じます。今後の日本企業の動きにも大きく期待したいと思います。