英国政府、2023年度予算案を発表

15-March-2023

2023年3月15日、ジェレミー・ハント英国財務相が2021年度予算案(Spring Budget)を発表、インフレ率の低減、経済成長の促進および国家債務残高の縮小に向けた計画を示しました。このコラムでは、弊社や弊社のお客様に関連する下記の予算項目を中心に、その概要をまとめました。

 

Big Ben and parliament

経済及び財政見通し

英国予算責任局(The UK Office of Budget Responsibility -OBR) は、英国経済は短期的には厳しい状況が予想されるものの、2023年の景気後退は回避可能との見解を発表。

•2023年GDP成長率は、2022年11月発表のマイナス1.4%からマイナス0.2%へ上方修正。GDP成長率は2024年には1.8% に、2027-28年には1.8%を上回る見通し。 

•インフレ率は、2022年第四四半期の10.7%から2023年第四四半期には2.9%へ低下すると予測。

•国家債務残高は、2023年度(2023-24年)にはGDPの92.4% に、その後2024-27年に上昇した後2027年度(2027-28年)には94.6%に低下すると予測。

•財政赤字については、2023年度(2023-24年)にはGDPの5.1%  に、その後2027年度(2027-28年)には1.7%に減少の見通し。

•失業率は1%弱上昇の4.4%と予測。

税制

•2021年3月の予算発表時に表明のとおり、法人税を2023年4月より現行の19%から 25%へ引き上げ。

•2021年に導入された設備投資に対する税制優遇策The super-deduction allowance(現行:設備投資額の130%)は、当初の予定通り2023年3月末日をもって終了となり、2023年4月1日から2026年3月末日までは新税制優遇(設備投資額の100%)を適用予定。

•中小企業支援策として、2023年4月1日より研究開発費控除(Research & Development Expenditure Credit (RDEC) )が13% から20%に引き上げ。

 

ライフサイエンス

 

ライフサイエンス産業の支援策として、新薬や医療技術の認証プロセスを加速させるため、規制を見直す。

Investment Zones インベストメント・ゾーン

インベストメント・ゾーンと呼ばれる12の地域を新たに指定、該当地域ではグリーン産業、デジタルテクノロジー、ライフサイエンス、クリエイティブ産業、先進製造業など成長が見込める分野に政府補助金を充当。そのうちイングランドでは、各地域において今後5年間で8000万ポンド(128億円)が充当される見込み。

また12地域のうち8地域はイングランドの中部および北部地域であり、南北経済格差縮小を目指す英国政府のレベリングアップ政策を反映している。

 

エネルギー

 

•原子力を「環境的に持続可能なエネルギー源」ととらえ、再生可能エネルギーと同様にグリーン投資として分類することで投資を促進。

•原子力分野では、特別会社「グレート・ブリティッシュ・ニュークリアGreat British Nuclear (GBN)」にて小型モジュール式原子炉(SMR)の公募コンペを段階的に行い、SMR関連最先端技術の選抜や民間企業との共同投資を目指す。 

•二酸化炭素回収・貯留(Carbon Capture, Usage and Storage (CCUS))分野に200億ポンド(3兆2000億円)を投じる。

 

【弊社の見解】

英国では昨今、水素への注目が高まり政府も補助金プロジェクトを複数発表してきていたにもかかわらず、今回の予算発表では水素への言及が特になかったことは予想外でした。

また、ハント財務相は「洋上風力分野で英国が世界を牽引している」と誇らしげに言及したものの、再生可能エネルギーへの投資促進につながる具体策は盛り込まれていません。

弊社は英国政府より3月中に発表される予定のNet Zero政策にも注視しています。発表され次第改めて当ウェブサイトにてその内容をご報告します。

 

デジタル技術

 

•エクサスケールのスーパーコンピューターの開発に9億ポンド(1,440億円)を投じる。

•英国政府は今後10年間に渡り、AIの重要な発展に寄与する研究者に対して毎年100万ポンド(1億6000万円)の賞金を授与する。 

•量子関連技術に対し今後10年間で250億ポンド(4兆円)の政府補助金を充当、新型コンピューター、セキュアな通信の開発および量子計測、イメージング、タイミング分野における飛躍的な技術力向上を支援する。

 

 

弊社は、長年蓄積してきた知見と日英間ビジネスの橋渡し経験を活かし、日英両国の政策を詳細に分析するとともに、政策が日英間または両国発のグローバルビジネスや投資に及ぼす影響をふまえ、両国企業の皆様をご支援しています。

どうぞお気軽にお問い合せください。

 

*円換算レート:1ポンド=160円にて計算