英国経済の将来と日本企業

08 November 2019

アンドレア・レッドサム ビジネス・エネルギー・産業戦略大臣と談笑する弊社代表江口・ベイコン

Courtesy of Embassy of Japan in the UK

10月29日、在英国日本国大使館・The British-Japanese Parliamentary Groupの共催による「Japanese Business and the UK’s Future Economy」にご招待をいただき出席してまいりました。会場でのスピーチや意見交換からは、日英両国が引き続お互いを重要なパートナーと位置付けていることが強く感じられました。

このコラムでは、日英間でコラボレーションが進んでいる産業分野や、両国の産業政策の類似点などについて解説します。

 

重要なパートナー

英国国際貿易省(DIT)によると、昨年の日英間貿易は£290億5,000万ポンド(約4兆670億円/換算レートGBP=JPY140)で、2017年度に比べ8%増加しました。

英国に進出している日本企業の数は約1000社にものぼり、それらが15万人以上の雇用を創出しています。

 

登壇したアンドレア・レッドサム ビジネス・エネルギー・産業戦略大臣は、今我々が直面している重要課題 “Grand Challenges” (1)の解決に向けた日英の協業に言及しました。長年にわたり両国が強固な関係を持つ自動車産業業界のみならず、高齢化や気候変動などへの取組みを目的とした新しい分野でも共同研究や協業が進んでいます。

 

レッドサム大臣はさらに、ブレグジット後の日英貿易のあり方について英国政府が産業界から広く意見を求めていることにも触れ、日本企業に対しても協力を求めました。

 

(1)英国政府は産業戦略の中で、英国政府と経済が直面する重要課題をGrand Challengesとして掲げている。産官学が協働して社会課題の解決を図ると同時に、技術開発やビジネス創出の機会とし、英国が世界をリードですることを目指している。最初に注力する分野として人工知能(AI)&データ、高齢化社会、クリーン成長、モビリティの未来 の4つを掲げている。

 

2019年日英共同声明

2019年1月の日英共同声明では以下の分野において両国間の共同研究や協業を進めるとしており、今回のイベントで言及された分野もこの日英共同声明を反映していました。

 

• 水素技術の活用

• 二酸化炭素の回収・利用・貯留(CCUS)を含むエネルギーイノベーション

• 5G

• データの倫理的活用と保護

• アシステッドリビングや高齢化社会の課題解決に向けたロボット

• AI、IoTの活用

 

さらに、日本貿易振興機構(JETRO)、国際貿易省(DIT)、デジタル・ 文化・メディア・スポーツ省(DCMS)、及びビジネス・エネルギー・産業戦 略省(BEIS)が共同でスタートアップ企業の事業開拓支援を行い、スタートアップエコシステムの活性化を図ることも盛り込まれています。

 

 両国の産業戦略における類似点


                                                                  Courtesy of the HM Government                                                                                                                                   Courtesy of Public Relations Office, Government of Japan

 

 

様々な分野で協業が進む両国の産業戦略を照らし合わせてみると、類似点が非常に多いことが分かります。一例として英国のGrand Challengesと日本のSociety 5.0を比較してみましょう。

 

英国の Grand Challenges

• 人工知能(AI)とデータイノベーションの分野で世界をリードする 

• 世界が「クリーンな成長」へシフトする流れに乗り、関連産業を成長させる 

• モビリティ産業の将来形成で世界をリードする

• イノベーションの力を最大限に生かし、高齢化社会のニーズに応える 

 

日本の Society 5.0

• モノの運搬、測量、災害救助などへのドローンの活用

• 人工知能(AI)搭載の家電

• 無人トラクター、清掃ロボットなどロボットを活用したスマートワーク

• 自動走行車・無人走行車

• ロボットなどの先端テクノロジーを使った医療・介護サービス

• クラウドを利用したスマート経営

 

このように両国は共に先端技術による医療や高齢化社会の支援、AIやデータの最適化、自動運転など次世代モビリティの開発に重点を置いており、日英間の共同開発や投資も必然的にこれらの分野に集中しています。ブレグジット後も両国間の共同開発、輸出、投資が継続し、実ビジネスにおけるさらなる機会拡大へと繋がっていくよう願っています。

 

 

参考リンク

1. 在英国日本国大使館プレスリリースParliament Event – Japanese Businesses and the UK’s Future Economy(英語):

https://www.uk.emb-japan.go.jp/itpr_en/191029event.html

2. 2019年1月日英共同声明(日本語)

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000436826.pdf

3. 英国の産業戦略(日本語):https://www.gov.uk/government/news/373457.ja

4. 英国のGrand Challenges(英語) : https://www.gov.uk/government/publications/industrial-strategy-the-grand-challenges/industrial-strategy-the-grand-challenges  

5. 日本の「ソサイエティ5.0」(日本語): https://www.gov-online.go.jp/cam/s5/